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赤字の高速道路ってどこよ? [ムダ知識]

「赤字の高速道路ってどこにあるのよ。そんなのあるのかよ?」という質問がきた。


ふむ。

たぶん、ご質問されてきた方は、この資料を見て、私の記事に対して
批判をされてきたのだと思われる。

平成17年度路線別営業収支(東日本高速道路 試算値)
douroshushi.gif
出所:独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構



まず、認識していただきたいのは、役人がつくるこういう資料ってのは、
必ず、誰かをだますためにあるのだ、ということ。
こういう資料をまるごと信じてしまうと、まず、ものごとの本質は見えない。

この資料によると、東日本高速道路株式会社(以下、NEXCO東日本)の路線のうち、
赤字であるのは深川留萌自動車道だけで、しかも、その赤字額も、
年間0.1億円にすぎないということになる。

そんなわけないじゃん。

要するに、これって道路の料金収入から経費を引いただけ。
家計でいうと、給料から食費と光熱費を引いただけ。
最も大きい支出が含まれていない。
すなわち、高速道路を建設するのにつかったお金の償還分と金利など。
NEXCO東日本の場合、それは年額で5320億円となっている。

それを路線ごとに、割り振っていかなければいけない。

で、どうやって割り振るか。距離に応じてとか、交通量に応じてとか、
建設費に応じてとか、いろいろなやり方があるのだけれど、
ここでは最も単純な、距離に応じて割り振る方法で試算してみた。


douro.gif

この方法で試算すると、NEXCO東日本のうち、黒字なのは
緑の部分の路線だけで、残りはすべて、赤字路線ということになる。
いま、私はとても忙しいから、NEXCO東日本だけ試算してみたけど、
ヒマな人は、中日本、西日本もやってみてください。
たぶん、同じようなもんだと思うけど。


それにしても、すごいよね。

とりわけ、北海道の高速道路の路線の赤字額は、ものすごく大きくて、
前述の深川留萌自動車道なんか、
1kmあたりの赤字額は、年間で1.6億円。
まさしく、運営しているだけで大赤字である。
ちなみに、これからつくろうとしている高速道路の大半は、こんな路線だから。(笑)

それでも、これまで日本全国を走ってきた私の実感だと、
深川留萌は、まだまし。ていうか、将来があるから、納得できる。
本当にムダというか、誰も走っていないのは道東自動車道で、
帯広~足寄間なんか、東名とか中央を走り慣れた都会人にとっては、
怖くなるくらい、誰も走っていないから。(笑)
マジで、クマでも出たら、どうしようかと思ったもんなあ。


ところで、日本全国赤字路線だらけ、という状況は、かつての国鉄と
非常によく似ている。
けれども、鉄道の場合、線路だけあってもダメで、車両とか保安設備とか、
いろんな付帯設備の維持・管理もしなければいけない。
運転手さんなんかの人件費もかかるし。
ということで、国鉄が民営化され、JRになったときに、赤字路線の大半は
廃止されたのである。

それにくらべると、高速道路は無料開放さえすれば、みんな勝手に走ってくれる。
赤字ぶんは、揮発油税などの道路特定財源につけかえてしまえば、見えなくなる。
民営化会社だと、存続させておくためには、その意義が問われるけど、
無料化してしまえば、誰も文句は言わないし。

だいたい、問題の本質が見えてきたでしょ。
(^^;



ということで、今回の記事のまとめであるが、高速道路の大半は赤字だから。
40兆円もの累積債務を返済していくうえで、それをどうするかが、問題の本質なのである。
今回、民主党が主張しているように、いっそのこと、赤字の路線は無料化して、
黒字の路線だけ残しちまえ、というのは、それなりに、効果的な政策なのだけど、
無料化により、赤字がなくなるわけではない。
道路特定財源に吸収されて、見えなくなるだけだから。



ところで、道路は公共財だから、赤字路線のすべてがムダであるとは
私は思わないし、また、そんなことは言いたくない。
たとえば、道東自動車道でも、夕張~トマム間の峠区間なんかは、
一日も早く開通させるべきだと、私は思っている。
いまのままだと、冬なんか、危ないもんなあ。

でも、受益者負担の原則があるから、そういう区間は有料で開通させようよ、と。
そのかわり、誰も走っていないトマム~足寄間は、除雪の手間もかかることだし、
無料化するか、あるいはいっそ並行する国道38号線に一本化して、廃止しちゃおうよ、と。
これから、どんどん、そういった議論をしていけばいいと思うのである。



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