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オートバイ乗りにとっての空間形状認識について その3 [オートバイの話]

私たち、オートバイ乗りは、運転する際、
どこにビジュアルキューを求めているのか。
そして、そのビジュアルキューがない場合には、どうしたらいいのか。
3回に分けて書いてきたけれど、そろそろ、まとめに入ることにする。


前回までの記事では、オートバイ乗りは運転中、空間識失調(バーティゴ)
に陥ってしまうことがあるということと、空間形状の認識においては、
ヨコのパターンを使うタイプの人と、タテのパターンを使うタイプの人がいる
ことを書いた。
では、具体的に、空間識失調(バーティゴ)に陥らないように走るためには、
どうしたらいいのか。

たとえば、狭い道だと、ガードレールがないことが多い。
そういった道だと、私のように空間形状を認識するのに、
ヨコのパターンをビジュアルキューとして使っているタイプの人間(=ヨコ派)
にとっては、判断基準がなくなってしまうのである。(図1)


curve3.jpg
図1 ガードレールがないと、ヨコのパターンをビジュアルキューとして
   使っている人間にとっては、カーブの曲率が判断しづらい



上の例は、写真ではわかりづらいだろうけど、実際には45°くらい
曲がっている急なカーブである。しかも、カーブの頂点付近で
勾配が変わっているという、ヨコ派にとってはヒジョーにイヤな道で、
私は夜間、ここで、コースアウトしかけたことがある。

あるいは、前にも述べたように、丸い断面形状で、
白い壁が延々と続く、低圧ナトリウム灯照明のトンネル。
そういったところも、ヨコ派にとっては判断基準が
なくなってしまう。
下の写真のようなトンネルに、時速100kmくらいのスピードで
入っていくのは、私にとっては恐怖ですらある。


tunnel.JPG
図2 こういうトンネルに高速で入っていくのは、どうも苦手である



あるいは、濃霧など、視界が極端に悪くて、ガードレールが
見にくいときなど。そういった状況において、オートバイで走るのは、
ヨコ派の私にとっては、とても苦手である。
それでは、どうしているか。

そんなもん、ゆっくり走るしかない
じゃないですか。(笑)



ベテランのオートバイ乗りの方にとっては、
「それだけかい! 」
と突っ込まれてしまいそうであるが。


けれど、「公道では、ゆっくり走ろう。」というのは、
単なる精神論にすぎないけど、

「空間形状を認識するのに、ヨコのパターンを
ビジュアルキューとして使っているタイプの人
にとっては、視覚的に単調なパターンが続く
ところでは、形状認識ができず、空間識失調
(バーティゴ)に陥ってしまうことがある。
だから、そういう人はゆっくり走るべきだ。」


というのは、科学だと思うのだ。
また、自分がヨコ派の人間であると認識されていれば、
なるべくゆっくり走るだろうし、「少しでも安全に走るためには、
ガードレール以外のビジュアルキューを、常に探しながら走ろう。」
と心がけることもできると思うのである。


それに対して、タテのパターンをビジュアルキューとして
空間形状を認識しているタイプの人(=タテ派)は、
話を聞いていると、どんなところであっても
それほど苦にしないで走ることができるようである。

タテ派の人は、概して運転がうまいし、速い。
けれども、雪で樹木が覆われてしまうなど、
タテのビジュアルキューがなくなってしまうような状況だと、
急速に空間識失調(バーティゴ)に陥ってしまうようである。
だから、やはり注意が必要だと思われる。
(やや、特殊な状況ではあるけれど)


ということで、今回のシリーズ記事のまとめであるが、

●運転中、ビジュアルキューがなくなってしまうと、
 空間識失調(バーティゴ)に陥ってしまうことがある。
●空間形状を認識するためには、ヨコのパターンを
 ビジュアルキューとする人と、タテのパターンを
 ビジュアルキューとする人の、2通りのタイプがある。
●ヨコのパターンをビジュアルキューとするタイプの人は、
 ガードレールのない狭い道や、視覚的に単調なパターン
 が続くところを走るのが苦手である。そういう人は、
 いつもゆっくり走るべきである。
●タテのパターンをビジュアルキューとするタイプの人は、
 どんな道でも苦にしないし、また、概して運転が上手である。
 けれども、タテのビジュアルキューもなくなってしまう
 ような状況だと、急速に空間識失調(バーティゴ) に
 陥ってしまう傾向があるようなので、注意が必要である。

 
といったところであろうか。

ベテランのオートバイ乗りの方にしてみれば、
「あたりまえの話ではないのか。」
と思われるかもしれない。けれど、自分が空間形状を
認識するのに、ヨコのパターンを使っているか、
タテのパターンを使っているかを再確認しておくのは、
無意味なことではないと思われる。

安全に走るためには、べつに運転がうまい必要はない。
要するに危険な状況に近づかなければいいのである。
そして、どういった状況が危険であるかは、個人差があるし、
それを認識するのは、主として、想像力と科学の領域である
と思うのである。



私見ではあるが、ヨコのパターンをビジュアルキューとしている
タイプの人というのは、動体視力がよくないのではないかと思われる。
なぜ、静的な要素をビジュアルキューとしているのかというと、
それは動くものをとらえるのが、苦手だからである。
それに対して、タテのパターンをビジュアルキューとするタイプの人は、
移動に伴う光学的流動を使うのだから、動体視力がいいはずだ。
そういう人は、概して運転に向いているし、また、速いはずである。

私自身は、バスケットボールのように、静止しているゴールを
ねらうスポーツは得意だけど、バドミントンや卓球のスマッシュなど、
高速で動くものを打ち返すスポーツは、苦手である。
つまり、動体視力は良くない。
私は本質的には、運転に向いていないのである。
だから、20年近くオートバイを運転しているのに、
いまだに、どヘタなのである。
オートバイの運転をするためには、そういった自分の欠点をよく知り、
無理をしないことも重要であると思う。


謝辞
今回の記事は、いつも記事を読んでくださり、メッセージを
くださる、航空関係者のK.S.氏からの情報提供により、書きました。
K.S.氏には、いつも参考になるご意見をいただき、
感謝申しあげております。どうもありがとうございました。




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