SSブログ

オートバイ乗りにとっての空間形状認識について その2 [オートバイの話]

私たち、オートバイ乗りは、運転する際、どこにビジュアル
キューを求めているのか。じつは、これは意外と奥が深い
テーマなのである。


ここに、「移動時の空間形状の知覚に有効な視環境要素」という
論文がある。論文だから、ちょっと難しいけど、
興味のある方は、読んでごらんになっていただければ、と思う。

内容を要約すると、移動時の空間形状を認識するためには、
タテのパターンを手がかりとする人と、ヨコのパターンを手がかりとする人の、
2通りがいるらしいのだ。(図1)
タテのパターンを手がかりとするタイプの人は、
移動に伴う光学的流動、またはその速度差を使って
認識するらしい。それに対して、ヨコのパターンを
手がかりとするタイプの人は、静的な要素の密度勾配
を使って認識するらしい。実験サンプル数は少ないものの、
その比率は、だいたい半々ということだ。
ここでいう「手がかり」というのは、ビジュアルキューと
読みかえて、差し支えないだろう。

tateyoko.gif

図1 タテのパターンとヨコのパターン



ちなみに、私自身は、カーブの曲率を認識するのに、カーブの外側の
ガードレールを使っている。(図2)
そういった意味では、典型的な、ヨコのパターンをビジュアルキューとして
使っているタイプの人間である。

curve1.jpg
図2 カーブの外側のガードレールで曲率を判断する


私の運転におけるパターンであるが、カーブに入る前に、
上の写真の ↓ の部分に着目、その角度により、
カーブの曲率を判断し、その曲率に合わせた速度に減速してから、
カーブに入る、というものである。
私は、他の人も、みんなそうだと思っていた。
自分がそうだから、他人もそうである、というのは、
単なる思い込みである。

ここで、前回、私のことを「運転がどヘタだ。」と断じた友人に
再登場してもらうと、彼はカーブの内側の電柱や樹木など、
垂直に立っているものの間隔で判断している、という。(図3)
つまり、タテのパターンを手がかりとしているタイプの人間である。

curve2.jpg
図3 カーブの内側の電柱などで曲率を判断する


彼が言うには、カーブの内側にある立っているもので、
だいたいの曲率を判断し、視線は常にカーブの出口付近を見ている、
というのである。彼が言うには、カーブの出口付近さえ見ていれば、
自然にからだがそこに行くから、多少、オーバースピードになっても、
ちゃんと曲がれるものだ、というのである。
私のように、カーブの外側を見るというのは、彼にとっては
ありえないらしい。

「カーブの外側のガードレールなんか見てたら、
それに向かって、突っ込んでいっちまうよ。
だから、おまえは運転がどヘタなんだよ!」


ということである。

なるほど。

ちなみに、彼は速い。
四輪にしか乗らないけれど、とてつもなく速い。
若い頃にはラリーをやっていたから、狭い道でもガンガン走る。
けれども、私のクルマでスキーに行ったとき、
「おまえの運転じゃあ、いつ着くかわかんねえよ。」
と言われて、彼に運転をかわってもらったのだが、
そのとき、雪道のカーブで、くるんと180度、
まわってしまったことがあるけれど。(笑)

そのとき、私は助手席に乗っていて、顔がひきつって
いたけれど、運転していた彼は、くるんとまわりながら、
「あ、わりい、わりい。」
と言って、笑っていた。
で、そのまま態勢を立て直して走り始めたので、
それ以上、原因を追究しなかったのであるが、
いまから考えると、彼がふだん、ビジュアルキューとして
使っている電柱や樹木が雪で埋まってしまったので、
カーブの曲率が読めなかったのではないか、
と思われるのである。

私は助手席にいて、ガードレールを見て曲率を判断し、
カーブに入っていくクルマの速度から考えて、「あ、いったな。」
と思っていた。自分のクルマだから、そういうのはわかる。
まあ、タテ派は速いけど確実性に欠け、
ヨコ派は遅いけど堅実であるというように、
一長一短があるのかもしれない。


ということで、今回の記事のまとめであるが、
カーブの曲率を判断するために、ガードレールのような
ヨコに続いているものをビジュアルキューとしているタイプの人と、
電柱や樹木のような、タテに続いているものを
ビジュアルキューとしているタイプの人の、2とおりがいる。
そして、カーブをまわりきれない、という事故の多くは、
そういったビジュアルキューがなくなったことにより、
自分の速度とカーブの曲率の関係が認識できないという、
一種の空間識失調(バーティゴ)に陥ることにより、
引き起こされているのだ、と考えることができそうである。



次回は、このシリーズのまとめとして、
カーブの曲率が判断しづらい状況においては、どのような走り方
をすべきか、について書くことにする。