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「世界最速のインディアン」を見た [オートバイの話]

映画「世界最速のインディアン」を見た。


出所:ソニー・ピクチャーズ
オフィシャルサイト
 

映画の内容であるが、ニュージーランド出身のレーサーで、1000cc以下
の流線型モーターサイクルの最速記録保持者あるバート・マンローの
物語である。あまり詳しく述べるとネタばれしてしまうから、ご興味を持って
いただけた方には映画をご覧いただくとして、ここでは私の感想のみを
述べることにする。
 

私の個人的な感覚でいうと、このバート・マンローというオヤジは、
じつに困ったやつである。早朝、エンジンをふかして、ご近所に
迷惑をかけるわ、ちょっと若い人にあおられただけで、簡単に
スピード勝負を受けてしまうわで、もうめちゃくちゃである。
あるいは、アメリカに渡航しレースに参加する費用を持っていない
ので、モーターサイクリスト・クラブの仲間に、カンパを募ったり
している。自分の夢くらい、自分の力で実現しろよ、と思ってしまう。

お隣の子どもにも、ろくでもない大人の生き様を見せて、
良くない影響を与えている。
「夢を追うことをやめたら、人間は野菜と同じだ。」
などと、子どもに語るシーンがある。60才を超えたいい大人が
子どもに言うべきこととして、もう少し、まともな言葉を選べない
のだろうか。
 

けれども、どこに行っても好かれるのである。ひたすら夢を追うと
いう生き方に、日ごろ、平々凡々と生きている人間は、どうしても
共感してしまうし、また、つい巻き込まれてしまうのであろう。
そういった意味では、いつも周囲に迷惑をかけながら生きている
困ったオヤジなのであるが、どうしても好きになってしまう。
ま、そういうやつって、たしかにいるもんである。
 

その困ったオヤジの夢であるが、アメリカのユタ州のボンネビルの
ソルトフラッツ(塩平原)で開催される「スピード・ウィーク」に出場する
こと。そのため、1962年に単身アメリカに渡る。そこでも、大騒動を
起こしながらも、周囲の人々に助けられ、ユタ州まで行くのである。
そして、いざレースに参加しようとすると、登録をしていない、という。
もう、なんだかムチャクチャである。
 

ボンネビル・ソルトフラッツ州立公園の地図をみる
 
 
日本社会においては、人が自由に生きることに対しては寛容では
ないから、こういったオヤジは、決して受け入れられない。けれど、
アメリカでは、わりと寛容に受け入れられてしまうのである。
なんでも Take it easy! とばかりに受け入れてしまう西海岸の風土
を感じる。
 

オートバイで最高速に挑戦するということの意味であるが、私自身は
たまたま現在、旅をするための道具としてオートバイを選んでいるに
すぎず、ハードウェアとしてのオートバイなんか、好きでもなんでもない。
だから、正直いって、よく理解できない。
けれども、そういった夢を追い続ける技術者やレーサーたちの情熱が、
現在のオートバイの高性能化に結びついていることは、まぎれもない
事実である。だから、それは、たぶん意味があることなのだろう。


出所:ソニー・ピクチャーズ
 

オートバイに詳しくない方のために、少しだけ解説すると、
タイトルの「インディアン」であるが、アメリカの先住民である
インディアンのことではない。インディアン・モーターサイクルという、
アメリカのオートバイメーカーのことである。アメリカのオートバイ
メーカーというと、ハーレー・ダビッドソンが有名だけど、そのハーレー
よりも古い歴史をもっているメーカーである。インディアン・モーター
サイクルは1953年に倒産してしまうのだが、1998年に復活をとげている。

インディアン・モーターサイクル
 
 
ユタ州のボンネビルでは、現在でももちろん、レースは行われている。
ルールは5マイルないしは7マイルの直線コースを、スロットル全開で
ひた走り、その区間平均速度を競うというもの。
排気量やボディ形状などにより、じつに細かなクラス分けがされており、
その数は700以上におよぶらしい。だから、1967年に樹立された
バート・マンローの記録が、いまだに破られていないといっても、
それが本当にすごい記録だからなのか、あるいは「流線型バイクの
排気量1000CC以下」というクラスに、たまたま参加者が集まらない
せいなのかは、よくわからない。

ユタ・ソルトフラッツ・レーシング協会公式ページ
 
 
なお、映画のなかでは、オートバイの機構、部品などに関する専門用語
が頻繁に出てくるのだが、わりと正確に訳しているところに好感が持てた。
どうしてなのかな、とずっと思っていたのだが、映画の最後で
株式会社モリワキエンジニアリングの協力を得ているということがわかった。
日本側の関係者の配慮に、オートバイ乗りの一人として感謝したい。 

株式会社モリワキエンジニアリング 
 
 



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