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「ローカル路線バスの旅」にJRバス白棚線が登場した [旅情報]

テレビ東京の「ローカル路線バスの旅」を見ていたら、
JRバス白棚線(はくほうせん)が出てきたのだが。


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JRバス白棚線


最近、テレビを買った。
わが家では、2011年7月の地上波デジタル放送への
移行に伴い、アナログ放送が終了した時から、
テレビ放送を受信できなくなった。
デジタル放送に対応したテレビに買い替えなかったから。
とくに必要性を感じなかったのである。
しかしながら、あるテレビ番組を見たくなったので、
約2年半ぶりにテレビを買ったのである。
その番組とは、テレビ東京系列の「ローカル路線バスの旅」である。


この番組、結構、視聴率が高いようだから、
説明は不要かもしれないが、簡単にふれておくと、
太川陽介さん、蛭子能収(よしかず)さんという
レギュラー出演者と、マドンナといわれるゲストの
女性タレントの3人で、路線バスだけを乗り継いで
旅をする、というものである。
シンプルな内容だけど、それだけにウソがつけず、
おもしろい旅番組になっていると思う。


1月4日放送(BSジャパン 2月3日再放送)の第16弾、
館山~会津若松編では、私にとって、ちょっとなつかしい
路線が出てきた。JRバス関東の白棚線(はくほうせん)である。
もう、10年以上も前であるが、私はこの路線に乗ったことがある。
ちょっと変わった路線であり、番組のなかでも、
注意して見ると、その様子がよくわかったのだが。


太川さんたち一行は、栃木県の追分というところから、
徒歩で、この白棚線の古関(こせき)というバス停までたどり着く。
そこから、JR東北本線の白河に行くか、
JR水郡線(すいぐんせん)の磐城棚倉(いわきたなくら)
に行くかで迷うのだが、結論が出ないまま、
運転手さんに聞こう、ということになる。
すると、出発時間に差があるはずの上りと下りのバスが、
なぜか、ほぼ同時に来てしまう。

太川さんたちは、バスの運転手さんにそれぞれの終点
におけるバスの連絡を確認するため、上りと下りのバスを
2台とも停車させてしまう。
結局、白河に出た方がいいのではないか、という結論になり、
白河行きに乗るのだが、この間、約2分間、2台のバスにより、
道路は完全にふさがれたままであった。

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問題のシーン


さて。
このシーンを見ておられた方は、なにか違和感を
お感じになったのではないだろうか。
上りと下りのバスが長時間停車して、道路をふさいでしまう
というのは、一般公道であれば、他のクルマの通行のじゃま
になるから、ありえない。
「田舎のバスだから、大丈夫なのでは?」
と思われるかもしれないが、路線バスが走っているような道路は、
どこでも、それなりに交通量があるのが普通である。

じつは、あれが可能だったのは、あの道路には
他のクルマが入ってくることが、絶対になかったからである。
そう。バスの専用道路だったのである。


あの道路は、もとは鉄道であった。
国鉄時代の白棚線であり、すでに廃止されている。
そして、かつて線路が敷かれていた路盤を舗装して、
バス専用道路として使っているのである。
もと鉄道で、現在はバス専用道路という路線は、
この白棚線のほか、奈良県の五新線(ごしんせん)などがある。
いずれも同じような事情による。


太川さんたち一行が、たどりついた古関のバス停は、
鉄道時代の駅があったところで、あの部分だけ道幅が
ひろくなっている。そして、上下のバス同士が鉄道の
単線区間のように行き違い交換するのである。
白河行きのバスと磐城棚倉行きのバスが、
ほぼ同時に来たのは、そういうことであったのだ。

古関バス停付近の地図

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古関バス停付近の写真
出所:Google Maps ストリートビュー   ※「バス専用道路あり」という標識がある


非常におもしろいシーンであったのだが、番組の中では、
あの道路がバス専用道路であるという説明は
一切なかった。おそらく、TV東京の制作スタッフの
みなさんは、そういった事情を知らなかったのであろう。


これが大手のテレビ局なら、あらかじめ、こういった事情は
完璧に調べあげており、古関での行き違い交換のシーンでは
女性アナウンサーが、
「さて、ここで問題です。」
などと言って、突然、クイズが始まるだろう。そして、
「なぜ、この2台のバスは、停まったままなのでしょうか。」
という問題が出される。

それに対して、大勢のひな壇芸人たちが、ボケまくる。
「運転手さんが、女性の乗客にナンパをするため。」とか、
「乗客同士が日記を書いていて、あそこで交換するため。」とか、
ありえない回答が続出する。その間、女性アナウンサーは、
たいしておもしろくもないのに、わざとウケまくる。
そして、正解はCMのあとで、などとムダに引っ張る。

そして、CM明けに女性アナウンサーが、
「じつは、ここはかつて鉄道だったのです。
現在はバス専用道路として使われており、
このバス停では、バス同士で行き違い交換
をしているんです。」
などと、したり顔で正解を言う。
すると、ひな壇芸人たちが、「えーーーー!」と
おおげさに驚く、という感じになるだろう。


TV東京では、そんなくだらない演出はいっさいなし。
3人は本当に行き当たりばったりで、旅をしている。
そして、最終的に目的地に到達できず、「失敗ーーー!」
などという結末になることもある。
テレビ番組としては、考えられないゆるさであるが、
それが「ローカル路線バスの旅」の魅力になっていると思う。



ということで、今回の記事のまとめであるが、
JRバスの白棚線は、バス専用道路を走るという
おもしろい路線である。もし、近くに行くことがあったら
乗ってみるのもいいかもしれない。


JRバス白棚線は、ローカル鉄道路線の将来像を
さぐるうえでのテストケースとなっている。
道路と線路では、保守にかかる手間はくらべものにならないし、
車両も、鉄道車両が1台1億円ちかくするのに対して、
バスは2~3,000万円くらい。
また、鉄道の運転手になるには専門機関での訓練が必要
であるのに対して、バスの場合は大型二種免許があればいい。
つまり、鉄道とバスを比較すると、運営にかかるコストは、
バスの方が飛躍的に安いのだ。
さらに、専用道路を走ることにより、定時運行が可能でもある。

そのようなことから、将来的には、ローカル鉄道路線は
そのほとんどがバスに転換され、白棚線のようになる
のではないか、と考えられている。

実際に乗ってみると、白棚線は、案外、便利である。
専用道路を、バスは時速60kmで走る。
信号もないから、はやい。
古関のバス停から新白河駅までは、15分くらい。
そこから東北新幹線で、東京まで1時間半くらいで着く。
職種によっては通勤することも可能だろう。

新幹線の駅をハブとした公共交通網の整備は、
日本の交通におけるひとつの課題なのであるが、
白棚線のような形態は、その有望な解決策のひとつ
であると考えられている。