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正方形の写真が流行っているそうだけど [ムダ知識]

インスタグラムの影響により、正方形の写真が
流行っているそうだ。
NHKのニュースでいっていたけど。
なんだか、おもしろい現象が起きているもんだね。

写真には、いろんなサイズがある。
そのうち、正方形を採用しているのは、
スケッチ判と6×6センチ判、そしてインスタントカメラの
instax squareとポラロイドのみである。(下表のピンク色の部分)

photo.gif
※2017年4月現在、フィルムの入手および撮影が可能なもの。


スケッチ判というのは、ほとんどの方は見たことがない
だろうけど、日本では唯一、「マミヤスケッチ」という
機種が発売された。
じつは、私の父が昔、持っていたカメラがこれであった。
ということで、私の子どもの頃の写真は、みーんな正方形。
構図もへったくれもなく、全部、私と兄がど真ん中に写っている。
いま見ると、すっごい違和感があるけど、
私は子どもの頃、写真ってのはこういうもんだ、
と思っていた。

scketch.jpg
マミヤスケッチ


6×6センチ版は、ブローニーフィルムを使う中判カメラの
標準フォーマットである。
私が大学を出て最初に就職した会社は広告代理店だったんだけど、
当時、モデルさんの撮影は、ほとんどが6×6センチ判だった。
ハッセルブラッドを使うカメラマンが多かったね。

あのカメラ、シャッターを押すと、シュッボコンという、
ものすごく、でっかい音がする。
「レンズシャッターなのに、なんで、あんな音がするんだろ。」
と思っていたら、じつはバックシャッターという、フィルム面の
前に開閉する幕があり、その作動音だったんだね。

モデルさんの撮影に使うストロボは、バルカーという
でっかいやつで、チャージするとピピーッと音が鳴る。
大きな音量で音楽を鳴らしながら、モデルさんにポーズをとらせ、
シュッボコン...ピピーッ、シュッボコン...ピピーッ。
なんだか、やたらうるさかった。

グラフィックデザイナーがポラを見ながら、あーだこーだと
カメラマンに指図する。私はというと、はやく終わってくれよー、
と思いながら、スタジオの片隅で、じっと待っていたなあ。

hassel.jpg
ハッセルブラッド500C/M
出所:Hasselblad Group
http://www.hasselblad.com/

それはともかく、6×6センチ判のいいところは、
タテ、ヨコがないから、構図を考えなくてもいいことである。
カメラマンとしては、モデルさんを真ん中において、
四隅を広めに撮っておいて、
「あとはデザイナーさんのほうで、勝手にトリミングしてね。」
という感じであり、構図の問題でグラフィックデザイナーと
カメラマンがもめることは、ほとんどなかった。
ということで、早く帰ることができたから、ラクだったな。


インスタント写真のうち、instax squareは、いま正方形が
流行っているもんだから、新しくできた規格である。
ポラロイドは77×79ミリだから、昔からほぼ正方形。
インスタント写真だと、構図に凝る必要性がほとんどないから、
正方形がむいているんだろうね。

インスタント写真っていうと、大滝詠一さんの「君は天然色」の、
 ♪ 机の端のポラロイド
という一節が思い出される。歌詞のなかに、これほど大胆に
商品名が入っている例は、ほかに思い浮かばない。
当時、「ポラロイド」という言葉は、それほど一般的であり、
インスタント写真の代名詞になっていた。

正方形のポラロイドが、時間が経過するにつれて、
色褪せてくる。それは、記憶がうすれていくことを
象徴していて、色をつけてくれ、という言葉につながる。
とてもビジュアルな詩だよね。

cheki.jpg
“チェキスクエア” instax SQUARE SQ 10
出所:富士写真フイルム
http://instax.jp/square/


pola600.jpg
ポラロイド600
出所:ポラロイド
http://www.polaroid.com/

以上のように、写真の歴史のなかで正方形というのは
スケッチ判と6×6センチ判、インスタントカメラの一部のみ
であり、それ以外は、ほとんどが長方形である。
つまり、正方形というサイズは、例外的なのである。
さらにいうと、カメラを構えるとヨコ長の長方形になる
ことが多い。人間の目はヨコに付いているから、
それがいちばん、自然なんだろうね。

けれども、正方形だと、構図のことは考えなくてもいい。
だから、撮りたいものを、すなおに真ん中に持ってくるといい。
単純明快で、気軽に撮る写真には、むいている。
インスタグラム(インスタント+テレグラムの造語)の主旨から
考えて、
「構図とか、そんなのどうでもいいからさー。
気軽に撮って、どんどんアップしてね ♡」
ということなんだろう。それはそれで、写真の楽しみ方の
ひとつなんだろうね。



ということで、今回の記事のまとめであるが、
現在、正方形の写真が流行っているけれども、
それは写真の歴史のなかでは、かなり例外的である。
けれども、正方形の写真は、構図を気にしなくてもいいので、
気軽に写真を楽しむにはむいているといえる。


追記
ハッセルブラッドとか、いつの時代よ。w
いまや35ミリフルサイズデジタルの時代。
プロだとふつう、キヤノンでしょ。
ジジイにこんな昔話を書かれても、
なんの役にも立たないんですけど。
まあ、そんなこともわからないくらい、
耄碌(もうろく)しているのかもしれませんが。w

というご意見をいただいた。

→まあ、昔の話ですけどね。(笑)

私が広告代理店に勤務していたのは、1980年代です。当時、商品や建物など、アオリが必要な撮影は4×5インチ判、人物など、アオリが必要ない撮影は、6×6センチ判が主に使われていました。カメラは4×5インチ判ではジナー、カンボ(レンズはシュナイダー、ローデンシュトックなど)。6×6センチ判では、ほとんどがハッセルブラッド(レンズはカールツアイスのプラナー、テッサーなど)で、たまにブロニカ(レンズはニッコール)を使っているカメラマンがいましたね。

35ミリ判は、チラシとかカタログのような、わりとどうでもいい撮影に使われていました。ちなみに、広告業界における35ミリ判のカメラは、当時は、ほとんどがニコンでして、キヤノンを使っているカメラマンは、私はあまり見たことがないです。モデルさんの撮影で、たまにキヤノンを使っている方がいましたが。

私自身は広告の世界しか知らないのですが、出版の世界では、当時から、ほとんどが35ミリ判だったようです。これは、

「画質とか、どうでもいいから。とにかく、たくさん撮れて、はやく現像があがってほしいの。だから、35ミリ判以外、必要ないから。アオリ? なにそれ?」

という、出版業界の事情によるものです。そして、

「色は印刷原稿にむくように、ハデハデがいいわ。それと、すべての撮影をプロに依頼したら、お金がかかってしょうがないから、編集部員(=素人)でも撮れる、TTL露出計内蔵のAEカメラが欲しいわ。」


というニーズがありました。キヤノンはこういった声に、ズバリこたえました。
その後、出版の世界では、カメラはデジタルに移行しました。アドビの前身であるアルダスがPageMakerを出して、DTPが普及したことも、デジタル化に拍車をかけたように思います。キヤノンがデジタル化で先行したのは、こういった出版業界の動向に、いちはやく対応したからです。

逆に、広告業界の顧客を抱えていたニコンは、画質にこだわりすぎて、デジタル化に慎重になり、開発が遅れました。また、「プロには、オートフォーカスなんか必要ない。」という考え方から、AFの開発も遅れに遅れ、スポーツ報道の世界でもキヤノンに席巻されました。結果的に、ニコンはプロ用機材におけるシェアを大きく落としました。これは、ご意見をくださった方のご指摘のとおりですね。現在、ニコンとキヤノンのシェアは、半々くらいだと思われます。

同じ出版業界でも、やや特殊な世界、ヌード撮影で人気があったのは、ペンタックス6×7でした。この理由ですが、ハッセルブラッドなど、ウェストレベルファインダーのカメラだと、左右が逆になります。ハッセルで人物を撮ったことがある方は、直感的にわかっていただけると思いますが、これって慣れていないと、カンが狂うんですよ。
ペンタプリズムを使ったペンタックス6×7は、左右が逆になりません。ですから、誰が撮っても、それなりのポジができます。きちんと撮影技術を勉強していないヌード専門のカメラマンとか、あるいは編集部員などの素人には、根強い人気があったようです。広告業界では、まず見ないカメラでしたが。

ま、たしかに、年寄りがこんな話をしても仕方がないかもしれません。が、カメラをはじめとする光学機器には長い歴史があり、デジタル化は、ごく最近のこと。しかも、それぞれのメーカーのもつ歴史の延長線上にあります。そういった意味では、これまでの流れをみることも、無意味ではないと、私は思います。
ま、多くの読者の方々には、バカの書く駄文として、気楽に読み流していただければ幸いです。(笑)


35ミリ判が、チラシとかカタログにしか
使われていなかったというのは意外でした。

というご意見をいただいた。

→昔のハナシですけどね。

商品撮影では、四角いものは四角く撮らないと、クライアントは納得しません。また、建物は垂直に立っていないと、不動産会社はOKしてくれません。ということで、必ず、アオリが必要になります。アオリができるカメラというと、4×5インチ判のビューカメラでした。

当時、35ミリ判でも、PCニッコールというレンズが、あることはありました。PCとは「パースペクティブ・コントロール」の略で、ようするに、シフトとかティルトなどのアオリ操作ができるレンズです。が、私は使っているプロを見たことがありません。
カメラマンとしても、写る像のピントと被写界深度を、直接、自分の目とルーペで確認しながら撮った方が確実なので、広告業界では、すべて4×5インチ判のビューカメラが使われていました。

モデルさんの撮影では、アオリが必要ないので、6×6センチ判か、35ミリ判かという選択になります。その画質ですが、35ミリ判と6×6センチ判を比較しますと、そりゃーもう、全然ちがいました。
35ミリ判だと、B全判のポスターにはできないです。それだけで、もう、ちゃんとした広告写真には使えなかったですね。6×6センチ版であれば、B全判のポスターでも余裕です。
また、それくらい大きな印刷物になると、レンズの性能がもろに出てくるんですよ。ハッセルブラッドで使われるプラナーとか、ブロニカで使われるニッコールだと、十分、鑑賞にたえます。が、当時の35ミリ判カメラのレンズの性能だと、単焦点でもきびしかったですね。雑誌広告でも、A4判の女性誌で表4全面とか、見開きとか、そういうレイアウトだと、35ミリ判は使わなかったです。

チラシとかカタログくらいのサイズでは、レンズの性能なんかわかりませんし、また、そういった印刷物では、誰も画質のことなんか気にしてません。35ミリ判でも、まったく問題なかったです。

現在は、前の方がご指摘のように、広告業界でも35ミリフルサイズのデジタルが主流になりました。正直いって、2000万画素くらいで、B全判のポスターなんかできるのかよ、という気もしますが、そんなことを言うと、それこそ耄碌したジジイ扱いされますので、これくらいでやめておきます。(笑)



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