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筒石(つついし)駅はあいかわらず湿っぽかった [旅情報]

えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインに、
筒石という駅があるのだが。


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筒石駅


筒石駅は、そのスジの人たちには有名な存在である。
どういうスジかというと、鉄道ファンのなかでも、
とりわけ、駅に興味があるという人たちである。
ま、きわめて少数派なんだけどね。

で、なんで有名なのかというと、この駅、
全長約11キロメートルの頸城(くびき)トンネルの
なかにあるのである。


じつは、筒石駅は最初から、トンネル内にあったわけ
ではない。以前は、海岸寄りの地上にあった。
しかしながら、このあたりはフォッサマグナとよばれる
断層が非常に多い地層のため、地盤がよわい。
そのため、しばしば地すべりを起こし、そのたびに
当時の北陸本線は不通となっていた。

これではたまらん、ということで、当時の国鉄は、
名立(なだち)駅と能生(のう)駅の大半をトンネルで
抜けてしまおうと考え、1969年に頸城トンネルが完成した。
で、中間にあった筒石駅は、頸城トンネルのなかに
移設されたというわけ。

地理院地図




2016年4月1日午後2時41分、私の乗っていた列車は
筒石駅に着いた。
駅員さんが出迎えに出ている。
JRからえちごトキめき鉄道になり、この区間を走る
特急列車はなくなった。にもかかわらず、駅員常駐の制度
が維持されていることに、私はすこしおどろいた。

筒石駅は、長大トンネルのなかにあるという特殊な
環境のため、列車の通過時に強風が吹く。
東京の地下鉄でも、強風が吹くことはある。
けれども、JR時代の頸城トンネルは、特急列車が
時速130kmでぶっとんできたのである。
そのため、トンネル内の風速は、最大で秒速30メートル
を超えていた。それで、乗客の安全を確保するため、
駅員さんが常駐していたのであった。

現在のえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインは
停車および通過する車両の多くは、ET122系という
短い気動車である。
電化区間なのに、なぜ気動車なのかというと、
糸魚川駅構内で交流と直流が切り替わるためである。
えちごトキめき鉄道は、高価な交直両用電車を
購入するための費用を捻出することができなかった
のであった。

似たようなケースとしては肥薩おれんじ鉄道があるが、
ま、それはともかく、列車のほとんどが短い編成、
しかも速度が遅い気動車になったのだから、もう、
トンネル内に強風が吹くことはない。
しかもワンマン運転なのだから、
出入り口以外をフェンスで囲ってしまえば、
駅員が常駐するほどのことはないと思うのだが。

それにしても、湿っぽい。
プラットフォーム全体が水で濡れている。
前述のように、このあたりはフォッサマグナとよばれる
地質のため、トンネルは何箇所もの破砕帯を通過している。
そのため、常に地下水が湧き出ているのである。


じつは、私は1997年8月31日にも、この駅に来ており、
そのときは、改札口で入場券を買って、
おそろしく長い階段をおりて行った。
階段が終わると、重い鉄の扉があった。
それを開けると、ほとんど照明のない、ほの暗いプラット
フォームがあり、そして、全体が地下水で濡れていた。
なんともいえない、不気味さがあった。
その場に貞子が出ても、すこしもおかしくなかった。

「なんだか、ものすごい駅だな。」
と私は思った。
現在の筒石駅の湿っぽさは、あのときと、すこしも
変わっていない。

トンネル内にある駅は、現在はこの筒石駅のほか、
JR東日本上越線の土合(どあい)駅と
湯檜曽(ゆびそ)駅、北越急行ほくほく線の
美佐島(みさしま)駅、野岩鉄道会津鬼怒川線の
湯西川温泉(ゆにしがわおんせん)駅がある。
それと武蔵野線の新小平(しんこだいら)駅、
福知山線(ふくちやません)の武田尾(たけだお)駅は
ホームの半分くらいがトンネルの中だから、
半トンネル駅といってもいいだろう。
いずれにしても、トンネルの中の駅というのは
きわめて少ない。

※津軽海峡線の吉岡海底駅、竜飛海底駅は
北海道新幹線の開通に伴い、2014年3月をもって
廃止された。
※地下鉄の駅は除く



私自身は、このうち、ほくほく線の美佐島駅を除く、
すべての駅に降りているが、プラットフォーム全体が
湿っぽいのは筒石駅だけである。筒石駅のこの湿っぽさは
遠くから来て、味わうだけの価値はあると思われるのである。



ということで、今回の記事のまとめであるが
えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの筒石駅は
トンネルの中にあり、いつも湿っぽい。
機会があれば、ぜひとも、その湿っぽさを体験して
いただければと思う。


えちごトキめき鉄道では、筒石駅での入場券購入者
に対し、絵はがき状の「入坑・入場証明書」を希望者に
配布している。これも、ご興味があれば、入手される
のもよいと思われる。

また、頸城トンネルが完成したあとの旧北陸本線は
自転車専用道路になっている。(久比岐自転車道)
この道は、鉄道時代のトンネルが、そのまま使われて
いたりして、なかなかおもしろいところである。
こちらもご興味があれば、ぜひとも走ってごらんに
なるといいだろう。


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