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イノブータンランドは、まさにオアシスであった [太平洋岸自転車の旅]

紀伊勝浦~和歌山までの自転車旅行中に、
道の駅「イノブータンランドすさみ」に立ち寄った。
周辺は、コンビニがまったくないエリアで、
まさに、ハイウェイのオアシスであった。


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道の駅イノブータンランドすさみにて  2008年12月27日


私は長年にわたり、自転車旅行をしてきたけれど、昔といまをくらべると、
決定的に違うな、と思うのは、コンビニが普及したことであると思う。
コンビニが登場するまではどうしていたか。
お昼ごはんについては食堂に入るか、スーパーや個人商店で
食材を買って、携帯型のコンロで加熱して食べていた。
飲み水は、主として駅や公園の水道でくんでいた。
ときには、見ず知らずの個人の家の玄関をたたき、
「すみませんが、お水をいただけませんか。」
と言って、ボトルのなかに、水を入れてもらったこともある。

断られたことはない。

昔はみんな、旅行者に対して優しかったから。
「まあ、ちょっと上がっていきなさい。」と言われて、
お茶とお菓子をご馳走になったこともある。
いまだと、見ず知らずの他人がたずねてきたら、
まずドアを開けてくれないだろうし、場合によっては、
110番通報をされてしまうかもしれない。


そのような社会情勢の変化のなかで、コンビニは旅行者にとって、
オアシスのような存在である。
そこに行けば、食料、飲みものだけでなく、日常生活に必要な
すべてのものが揃っているのだから。
トイレも貸してくれるし、必要ならば、現金も引き出せる。
そんなものが、日本じゅうにあるのである。
まさに、時代は変わったといえよう。


私も含めて、現在の自転車旅行者は、みんな、コンビニがあることを
前提に、装備を決めているものと思われる。
いちばん上の写真は、今回の旅における私の自転車と装備であるが、
2泊3日で210キロメートルという距離を走ろう、というわりには、
昔では考えられないくらい、荷物が少ない。
飲み水と、必要最低限の工具しか、持っていないのである。
コンビニがあることを前提としているから。

しかしながら、そのような常識が通用しない地域もある。
紀伊半島南西部が、まさにそうであった。


12月27日朝10時、私はすさみ町の国道42号線を、ひたすら北上していった。
前の日は、潮岬のユースホステルに宿泊し、その日の朝6時ごろに出てきた。
だから、朝食はまだである。ずっと、コンビニをさがしながら、
ここまで来たのだけど、とうとう一軒もなかった。


串本を出てから、約30km。
国道42号線沿いには、コンビニはおろか、商店らしきものはなにもない。
さればということで、JR紀勢本線の駅に行ってみたものの、
このあたりの駅はほとんどが無人だし、駅前にはなにもない。
無理もない。
乗降客数は1日に10人とか、そんなもんである。
串本とか白浜とか、近くに大観光地があるだけに、少し意外なのだけど、
このあたりは、日本のなかでも、最も人口密度が低いところなのである。

朝、出発するときに、700ccと500ccのボトルに水を入れてきたけれど、
それも、そろそろ尽きようとしていた。
空腹で血糖値が下がってきて、だんだんいらいらしてきた。


そうして走っていると、国道沿いに、なにか大きな施設が見えてきた。
道の駅イノブータンランドすさみ???

なんじゃそれは!

そう思ったけど、とりあえず入ってみた。
このあたりの特産品として、イノブタというものがある。
イノシシとブタをかけあわせたものであるが、
イノシシのような臭みがなく、ブタよりも脂肪が少ない。
私はずいぶん前に食べたことがあり、
そのときは、「たしかに美味しいな。」と思った。

それはともかく、なんでイノブータンランドなのか。
道の駅のなかには、イノブータン城(笑)があり、
イノブータン大王と王妃が、ならんで座っておられた。
真ん中の人形は、皇太子か王女なのだろうか。

まあ、とにかくユニークな道の駅なんだけど、自転車旅行者としては、
周囲にコンビニがまったくない状況なので、非常に助かった。
飲みものと「さんまずし370円」を買って、少し離れたところにある
道路情報コーナーのテーブルと椅子で食べた。
午前10時40分。その日、初めての食事であった。


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イノブータン大王と王妃


少し休憩したのち、出発した。その後もずっと、コンビニはなかった。
串本を出てから約50kmものあいだ、一軒のコンビニもないのである。
おそるべきところである。
あるのは、ひたすら海だけであった。
結局、日置の集落にはいったところに、スーパーのチェーン店
「オークワ」があったので、そこで食糧と水を調達した。


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枯れ木灘といわれる美しい海


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国道42号線




ということで、本日の記事のまとめであるが、
国道42号線は、串本を出ると、紀伊日置までの約50kmのあいだ、
コンビニが一軒もない。自転車旅行者にとっては、注意が必要である。
時計まわりの旅行者は串本の町で、
反時計まわりの旅行者は紀伊田辺の町か、日置のオークワで
買い物をすませておくといいだろう。
そのような環境において、道の駅イノブータンランドすさみは、
まさに、オアシスのような存在であった。自転車旅行者にとって
利用価値は高いといえよう。


それにしても、これほどまでに、コンビニ不毛の地というものを、
私は知らない。人口密度の低いところを走ったことは、
ほかにもいくらでもあるけれど、
北海道だとセイコーマートをよく見かけたし、
沖縄だとローソンをよく見かけた。
山陰ではポプラが多かったし。
コンビニが嫌いな土地柄なのだろうか。

そういえば、和歌山県は、人口あたりのコンビニ普及率が
もっとも低いところであると聞いたことがある。
紀伊半島南部は大きな観光地が多いだけに、
コンビニがあることを前提としている自転車旅行者にとっては、
まさに、盲点のようなエリアであった。



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